DataRobotユースケース:30 日以内の再入院率の低減【ビジネス適用】

2024/08/26
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どの患者が再入院する可能性が高いかを事前に予測し、その主な理由を把握することで、30 日以内の再入院率を低減するための取り組みを積極的に行います。

意思決定環境

再入院予測のためにデータのパターンを学習する最も優れたモデルを見つけられるようになったら、DataRobot を使って簡単にそのモデルを目的の意思決定環境にデプロイできます。意思決定環境とは、モデルで生成された予測結果を組織内の適切な関係者が使用する方法、およびそれらの関係者がその予測値に基づいて全体のプロセスに影響する意思決定を行う方法を指します。 

この部分はユースケースの実装において重要であり、これによって再入院を減らし、臨床上の改善を達成するために予測が実業務で使用されるかどうかが決まります。 

意思決定の成熟度 

自動化 | 強化 | 混合

臨床医やケアマネージャーは DataRobot を使用することで、最も大切にしている相手、つまり患者との永続的な強いつながりを育むために必要な情報を獲得できます。データパイプラインで意思決定を自動化できるユースケースはいくつかありますが、再入院モデルは、臨床医の意思決定力を強化するためのものです。これはインテリジェントなマシンとして機能し、臨床医の専門知識と組み合わせることで、患者の転帰を向上させることができます。 

モデルのデプロイ

臨床医は DataRobot を使用して、常にすべての患者の主なリスク要因を明確に把握し、患者が退院する前後でインテリジェントな介入を実施できるようになります。

医療提供者の日常業務ワークフローに組み込まれている他のシステムに予測を統合できることに加え、医療提供者の EMR システムや BI ダッシュボードには予測結果を統合できます。前者の場合、臨床医は、すでに日常的に利用しているデータに列として予測を追加することで簡単に確認でき、担当する患者を監視できます。予測が解釈可能で透明性を持つようになるため、モデルが患者の再入院の有無を予測した理由を理解できるようになります 。

一般的な統合には次のものがあります。 

  • 電子カルテシステム(Epic)に予測結果を表示する 
  • ビジネスインテリジェンスツール(Tableau や Power BI など)に予測結果を表示する

このユースケースでは、予測値を Microsoft Power BI に統合して、臨床医がアクセスできるダッシュボードを作成し、再入院を防ぐために対処すべき患者の決定をサポートする例を示します。 

下のダッシュボードには、あるフロアにおける各患者の再入院の確率が表示されています。ここには、患者の再入院の可能性と、モデルがそのような予測を行った理由に関する上位要因が表示されます。看護師と医師は、このようなダッシュボードを利用して、どの患者が再入院する可能性が高いのか、その理由を把握することができ、各患者固有のニーズに合わせた予防戦略を実施することができます。 

モデルデプロイ可視化

意思決定の関係者

意思決定の実行担当者は、意思決定を日常的に利用して再入院の可能性が高い患者を特定し、介入の手段を把握する必要がある臨床関係者です。 

  • 看護師
  • 医師
  • ケアマネージャー

意思決定の管理者は、医療提供者の再入院改善プログラムのパフォーマンス分析プログラムを監視および管理する経営幹部の関係者です。 

  • チーフメディカルオフィサー
  • チーフナーシングオフィサー
  • チーフポピュレーションヘルスオフィサー

意思決定の作成者は、意思決定フローを適切に設定するテクノロジー部門の関係者です。    

  • 臨床オペレーションアナリスト
  • ビジネスインテリジェンスアナリスト
  • データサイエンティスト 

意思決定プロセス

しきい値を設定して、予測結果をそのまま、予見された再入院として扱うかどうかを判断することができます。臨床医が必要な介入戦略を策定できるように、しきい値のレベルごとに明確な対処項目を割り当てます。  

意思決定プロセス

低リスク: 退院時の手続き、注意すべき症状、外来通院に関する情報を含む電子メールまたはテキストを自動送信します。

中リスク: 退院時の手続き、注意すべき症状、外来通院に関する情報を含む電子メールまたはテキストを何回かのリマインダーも含め複数回にわたり自動送信します。退院後 10 日して患者を電子メールでフォローアップし、患者の状態を判断します。 

高リスク: 臨床医が患者に退院手続きについて直接説明します。さらに退院時の手続き、注意すべき症状、外来通院に関する情報を含む電子メールまたはテキストを何回かのリマインダーも含め自動送信します。退院後、毎週患者を電話または電子メールでフォローアップし、患者の状態を判断します。 

モデルの監視

意思決定の運用者: IT/システム運用者、データサイエンティスト 

予測サイクル: 毎日生成されるバッチ予測 

モデル再トレーニングサイクル: 割り当て済みのしきい値にデータドリフトが達した場合にモデルを再トレーニング。それ以外の場合、新しい営業四半期の期首ごとにモデルを再トレーニング

導入のリスク

  • 臨床医が予測結果に簡単かつ便利な方法でアクセスできない(すでに利用している EHR を別の Web ブラウザーで開く必要がある場合、または、または情報量が多すぎる場合)
  • 臨床医が直感的に理解できるような予測にならない
  • 予測やモデルがそのように予測した理由を臨床医が理解できない
  • 臨床医が高リスクの症例に対応するための戦略を策定できない 

信頼できる AI

このユースケースでは、従来のリスク分析に加えて、AI Trust の次の要素に注意する必要があると考えられます。 

ターゲット漏えい: ターゲット漏えいは、予測の時点では利用すべきでない情報を、モデルのトレーニングに使用している場合を表します。これは、特定の特徴量から最終結果に関する情報が洩れてしまい、トレーニング中のモデルのパフォーマンスが人為的に上昇する結果となります。このユースケースでは、41 種類のテーブルと幅広い期間のデータを集約する必要があるため、潜在的なターゲット漏えいの影響を受けやすくなっています。このモデルの設計とデータの準備段階では、予測の時点(退院)を特定し、それ以降のデータが含まれていないことを確認することがきわめて重要です。DataRobot は、2 回目の探索的データ分析時、およびオートパイロット中に情報に富んだ特徴量で特徴量リストを構成する際に、強力なターゲット漏えい検出を追加でサポートします。

偏りと公平: このユースケースで使用する特徴量は、保護対象として分類されたり、機密扱いになっていたりする可能性があります(年齢、性別、人種など)。保護対象の特徴量全体にわたってエラー率が同一であるかどうか評価することをお勧めします。たとえば、人種が異なる患者間で偽陰性率と偽陽性率が同等かどうかを比較します。特定の保護対象の特徴量に対する予測の精度が低く、再入院のおそれがある患者を特定できない場合にリスクが発生します。必要と判断した場合、モデリングプロセスのさまざまな段階で偏りを軽減する方法を検討できます。

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執筆者について
DataRobot

DataRobotはバリュー・ドリブンAIのリーダーであり、組織がAIをアイデアから実際のビジネス価値へ加速させることを支援しています。AIイノベーションの最前線で10年以上の経験を持ち、組織の収益向上、ビジネスビジョンの実現、そして私たちを取り巻く世界に真の変化をもたらすために必要な知識と経験を持ちあわせています。

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