DataRobot AI アクセラレーター:AI開発/運用プロセスの効率化を加速

2024/07/30
執筆者:
· 推定読書時間 3  分

DataRobotの山本です。本記事ではDataRobot AI アクセラレーターについて、データサイエンティスト目線でのメリットをご紹介します。

1. はじめに

AI技術の急速な進歩に伴い、多くの企業がAI利用を推進していますが、実ビジネスへの適用には依然として様々な課題が存在します。データ準備、モデル開発、デプロイ、運用といった各段階で専門知識と多大な時間を要し、最新のAI技術やベストプラクティスの導入も容易ではありません。

こうした課題を解決するため、DataRobotは「DataRobot AI アクセラレーター」をユーザーに提供しています。これは、DataRobotが蓄積したAI開発ノウハウをテンプレート化したコードベースのソリューションであり、開発プロセスにおける課題とその解決策を具体的に提示するものです。DataRobot AI アクセラレーターを活用することで、お客様はAI開発プロセスを飛躍的に効率化し、ビジネス価値創出を加速できます。

図1 DataRobot AIアクセラレーター
図1 DataRobot AIアクセラレーター

2. DataRobot AI アクセラレーターの特徴

DataRobot AI アクセラレーターの主な特徴は以下の通りです。

  • すぐに利用可能な分析テンプレートの提供:需要予測、顧客セグメンテーションなど、一般的なAI分析ユースケースに対応したテンプレートが用意されています。
  • ノートブックとの連携:DataRobot Notebooks/CodespacesやJupyter Notebooksとの統合により、柔軟なコード実行環境を提供します。
  • 高度なカスタマイズ性:テンプレートをベースに、企業固有のニーズに合わせて調整が可能です。

これらの特徴により、AI開発プロセスの時間短縮、データサイエンス技術の円滑な適用、既存のデータインフラとの連携を強力にサポートします。

3. DataRobot AI アクセラレーターの4つの主要カテゴリ

DataRobot AI アクセラレーターは以下の4つのカテゴリに分類することができ、それぞれが多様な活用事例を提案します。

3.1 高度なMLおよびAPIアプローチ

機械学習モデル構築フェーズにおいては最適なモデルにチューニングするための様々な試行錯誤が必要です。DataRobotはそれらの試行錯誤を「実験」と呼んでいます。このカテゴリに分類されているAIアクセラレーターは、DataRobot APIの高度な活用を通して、実験ワークフローの強化を支援します。具体的には機械学習の専門家を対象に、モデルの実験追跡、カスタム評価指標の実装、高度なアルゴリズム適用、などを可能にするソリューションを提供します。これにより、より高精度なモデル開発と効率的な実験管理を実現します。

3.2 エコシステムインテグレーションテンプレート

このカテゴリに分類されているAIアクセラレーターは、主要クラウドプラットフォーム(Databricks、Google Cloud Platform、AWS、Azureなど)とDataRobotの連携を簡素化する手法を提供します。データ取り込みからモデルデプロイまでの一連のプロセスをスムーズにすることで、開発効率を大幅に向上させ、既存インフラを最大限活用しながらAIソリューションを迅速に展開できます。

3.3 生成AIアクセラレーター

このカテゴリに分類されているAIアクセラレーターは、予測AIと生成AIを統合したソリューションを提供します。従来の予測モデルに生成AIの機能を組み合わせることで、例えばクラスタリング結果への自動ラベル付与、カスタマーサポートの自動化、予測結果の生成AIを利用した意味解釈、等々、より柔軟なAIソリューションによってAIの応用範囲を拡大し、新たなビジネス価値創出に貢献します。

3.4 ユースケースと水平アプローチ

このカテゴリに分類されているAIアクセラレーターは、特定の業界課題や一般的な機械学習問題に対応する分析フレームワークを提供します。例えばマネーロンダリング防止、需要予測、顧客離反予測など、様々な業界・分野で求められるAIソリューションのテンプレートが含まれています。これら業界固有の課題に即座に対応可能なソリューションを提供することで、AIプロジェクトの立ち上げ時間を大幅に短縮し、早期の成果創出を支援します。

4. DataRobot AI アクセラレーターの活用事例

DataRobot AI アクセラレーターは2024年7月時点で数十種類存在し、日々更新されています。ここでは、その一部を紹介します。

4.1 需要予測:新製品・新店舗のコールドスタート問題
小売業や製造業では、新製品や新店舗の需要予測が重要な課題です。これは、データサイエンス観点では『予測をしたい対象の過去実績データがない状況で需要予測を行う』という課題となります。この課題の解決には、DataRobot AIアクセラレーターの「End-to-end demand forecasting: cold start predictions」を利用できます。同アクセラレーターでは、予測対象とする新製品や新店舗によく似た既存製品・既存店舗の履歴データを用いて、新製品需要や新店舗での需要を予測するモデルを効率的に作成する手法をご紹介しています。

この手法により、新製品・新店舗の需要予測精度が向上し、生産計画最適化、商品/部品在庫の最適化や欠品率の改善につながります。

4.2 マネーロンダリング防止:生成AIを活用した顧客対応

金融機関にとって、マネーロンダリング防止は喫緊の課題ですが、この課題の解決には「Improve customer communication using generative AI and DataRobot」を利用することができます。具体的には以下のようにDataRobot AI アクセラレーターと生成AIを組み合わせることで、不正検知の精度向上と顧客体験の改善を両立できます。

・「異常検知」アクセラレーターで取引データを分析し、マネーロンダリングリスク予測モデルを構築する
・DataRobot AIプラットフォームの「予測の説明」機能でリスク要因を特定し、生成AIを使用して顧客向けメッセージを自動作成する
・特に融資申請が却下された申請者に対する肯定的なおかつ説得力のある説明文の自動作成

これらの手法により、マネーロンダリングの検知精度が向上し、誤検知率が減少するだけでなく、適切な顧客コミュニケーションにより顧客満足度が向上し、コンプライアンス対応も効率化されます。

以上の事例は、様々な業界や課題に対して柔軟に適用できるソリューションが提供されていることを示しています。AIモデル開発チームがプロジェクトの特性に応じて適切なAIアクセラレーターを選択することで、効率的かつ効果的なAI開発が可能となります。

5. まとめ

DataRobot AI アクセラレーターは、DataRobot APIを活用し、モデルの実験、開発、運用を効率化する包括的なコードベースのソリューションです。各テンプレートはデータサイエンスの知見を体系化し、再利用可能なコードベースのワークフローと、すぐに利用可能な機能ブロックとして提供されます。

DataRobot AI アクセラレーターの導入により、以下の効果が期待できます:

  • 開発サイクルの短縮:テンプレートや再利用可能なコードにより、プロジェクト立ち上げから実装までの時間を大幅に削減
  • イノベーションの促進:最新のAI技術やベストプラクティスを容易に導入可能
  • 品質向上:標準化されたアプローチにより、一貫性のある高品質なAIソリューションを提供
  • スキルギャップの解消:最先端のデータサイエンスの専門知識や分析方法をAIアクセラレータを通じて実現可能

AI活用の促進とビジネス価値の創出に向けて、DataRobot AI アクセラレーターの活用をご検討ください。

DataRobotトライアルのご案内

DataRobotでは、トライアル環境を提供しています。以下のURLからアカウントを作成し、DataRobotの主要な機能をお試しいただけます。

https://www.datarobot.com/jp/trial/

機械学習モデルの開発や運用に興味がある方、すでに携わっている方も、ぜひこの機会にDataRobotを体験してみてください。DataRobot AI アクセラレーターを含む様々な機能をお試しいただき、AIプロジェクトの効率化と価値創出の加速をぜひご体感ください。

ご質問やサポートが必要な場合は、アカウント作成時に提供される連絡先情報をご利用ください。より詳細な情報や個別のデモンストレーションをご希望の場合は、DataRobotの営業担当までお気軽にお問い合わせください。

執筆者について
山本 光穂(Mitsuo Yamamoto)
山本 光穂(Mitsuo Yamamoto)

データサイエンティスト

約15年車業界において最先端のIT技術を活用した製品プロトタイプ開発やデータ分析業務等に携わった知見を活用して、製造業、特に車関連企業様の課題解決支援に従事。またコミュニティ活動に積極的に取り組んでおり、データ分析コミュニティであるPyData.Tokyoのメインオーガナイザを務める。

得意な技術領域は地理情報空間分析/情報検索/機械学習等
2003 – 2005    :研究者 @ソフトウェアメーカ
2005 – 2018    :研究者 @自動車部品メーカ
2018 – 2021    :データサイエンティスト @損害保険(車分野担当)
2021 –      :データサイエンティスト @ DataRobot, Inc. – 製造業界

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伊地知晋平(Shinpei Ijichi)
伊地知晋平(Shinpei Ijichi)

データサイエンティスト

90年代から医療用画像診断装置メーカーで統計解析や機械学習を使った品質改善(シックスシグマ )、要因分析、異常予兆検知、医療データ分析などに従事。2018年からDataRobot社のデータサイエンティストとしてヘルスケアチームをリードし、主に医療機関や製薬企業でのAIアプリケーション開発をサポートしている。また、伝統的な統計解析手法と機械学習各々の特長を活かした分析アプローチを研究し、各所で講演を行っている。

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